REPORT特集

西都原のヒメボタル|幻想的な光の舞を後世に残すために協力できることとは?

2024.04.28

2019年「西都原 ホタルの光フォトコンテスト」
最優秀賞  Kaori Nogami(野上香織)@kimako_

西都原古墳群では5月になると、夜空に瞬く星のように光る、幻想的なヒメボタルの舞を楽しめます。

西都原の美しい蛍たちの舞を後世にも残すためには、蛍を見るために訪れる人たちの理解と協力も必要です。

西都原のヒメボタルのお話しと、私たちが協力できること。そして「西都原ひめ蛍を守る会」の保護活動についてご紹介します。

西都原の幻想的なヒメボタルの舞は「儚い恋物語」

西都原古墳群は、古来より聖地として地域の人々に愛され、景観が守られてきました。

西都原にある宮内庁の御陵墓参考地となっている森は、年に一度だけ一般参拝が許されていて、普段は立ち入ることができません。

ヒメボタルは山や森に棲む陸生の蛍です。守られてきた西都原古墳群周辺の森が貴重な生息地となっていて、森の中を光が飛び交う幻想的な光景を目にすることができます。

ヒメボタルの大きさは1センチ以下。飛んでいるのはオスで、メスは飛べません。

暗闇の中で光ることでお互いを見つけ出し、出逢い、結ばれます。

成虫になってからの寿命はオスで7日、メスで2~3日の命です。

幻想的な光景が見れる日は天候にも左右されます。風や雨、月明りが強い日には行動が鈍くなるため、これらの条件と重なると、オスとメスが出逢える時間はさらに限られてしまうことに。

出逢い結ばれた後に卵を産んだメスは、力尽きて亡くなってしまいます。

蛍の光の輝きは、残されたわずかな命の灯となる「儚い恋物語」なのです。

西都原のヒメボタルを守るために私たちができること

人工光や木の伐採などの環境悪化により生息数が減少し、準絶滅危惧種にも指定されている希少なヒメボタル。

いつまでも西都原の美しい蛍たちの舞を残すためには、そのわずかな期間の輝きを邪魔しないように、そっと見守らなければなりません。

約2週間となる繁殖期間中は、光が森を直接照らさないよう桜並木駐車場の利用制限を行い、19:00~21:00まで市道御陵墓周回線(御陵墓東)が通行止めとなります。

※2024年は、雨天時を除く5月4日~5月17日までの予定でしたが、ホタルが少なくなったため13日までとなりました。はやめの行動がおすすめです。

蛍を見るために車で訪れる場合はこのはな館の駐車場へ停め、御陵墓横の桜並木は通らない、停めないようにしてください。

蛍の生態に影響を与えないための鑑賞マナーを知り、西都原のヒメボタルを誰かに紹介する場合にも「オスとメスが出逢えるために大切なこと」を伝えていきましょう。

蛍のオスとメスが出逢うための「暗闇」を守る

蛍の光は、オスとメスが出逢うための信号です。

他の光は“出逢いのための限られた時間”を邪魔し、出逢えないまま命を終えてしまえば、生息に大きな影響を与えてしまいます。

月明かりでさえも嫌う蛍のために、光を発するものの使用は禁止です。

【使用禁止】
・懐中電灯(足元だけを照らし、生息地付近では消す)
・カメラのフラッシュAF補助光
・背面液晶光ランプ
・スマホ撮影・携帯撮影

ホタルの光はとても弱く淡いので「スマホではキレイに写らない」という点を理解し、暗闇だからこそ輝く美しい光景を心の記憶に残しましょう。

蛍に危害を与えない

ヒメボタルは米粒ほどの大きさ。とてもか弱く繊細なので、決して捕まえないようにしましょう。

虫よけスプレーや蚊取り線香は、蛍も嫌がります。タバコも厳禁です。注意が必要なマムシもいるため、肌を露出しない長袖・長ズボン・できれば長靴といった服装で訪れましょう。

「西都原ひめ蛍を守る会」の保護活動

「西都原ひめ蛍を守る会」の会長は、吉野順子さん。 吉野さんの想いに共感した人が集まって2018年に「西都原ひめ蛍を守る会」が結成され、保護活動が開始されました。

ヒメボタルの鑑賞時期は5月ですが、年間を通して環境保全や調査、学習会などさまざまな活動があります。
 

ヒメボタルの学びの場を提供

「西都原ひめ蛍を守る会」では、さまざまな形で学びの機会を提供しています。

植樹地のとなりの森に生息する、ヒメボタルの餌になる陸生貝を探して、生息地に放したり。

写真展を開催して、保護活動への理解や、ひめ蛍の生態や観賞マナーを伝えるきっかけを作ったり。



ヒメボタルの生態を学ぶことは、命の大切さや、環境問題を考える機会にもつながります。

植樹による「森の再生」

倒木や伐採によって荒れてしまい、ヒメボタルが去ってしまった山。

再びヒメボタルが生息しやすい環境に戻すためには、長い時間と手間が必要です。

育てた森に沢山のヒメボタルが帰ってくるのを願い、植樹による「森の再生」を行っています。

植樹地はそのままにしていると、草が生い茂ってしまうため、定期的に草刈リ・整備もおこなっています。

卯の花(ウツギ)の植樹

生息地が人工光の影響を受けやすくなると、光に弱い蛍はその場所に住み続けられません。

ヒメボタルを車のライト等の人工光から守るために、卯の花(ウツギ)を道路脇に植えています。

卯の花の苗は、中学校の福祉蛍授業で、子どもたちが挿木した苗を育てたものです。



蛍の季節と共に咲き誇る卯の花。

ヒメボタルの飛翔時期に車で訪れる際には、できるだけ光の影響を与えないように明るい時間帯に訪れ、卯の花を楽しみながら暗くなるのを待つのもおすすめです。

飛翔時期|遮光カーテンの設置・通行止め・飛翔調査

繁殖期となる約2週間ほど、雨の日を除いて毎日継続した作業が必要となるため、ボランティアの方たちの協力が欠かせません。

飛翔時期に数日だけでもボランティアに協力できる方は、ぜひ「西都原ひめ蛍を守る会」までお問い合わせください。

西都原のヒメボタルが飛翔する時期になると、月明りでさえ苦手な蛍たちのために遮光カーテンを設置。

 

飛翔調査では、一定場所の蛍数を調査することで、御陵墓全体の発生数がわかります。

市の方々の協力を得ながら近辺道路を通行止めにし、交通整備も行っています。

期間中、交差点入口に設置されているのは募金箱。

生息地手前までは、中学生と先生が手作りした竹灯籠や、子どもたちのイラストが入ったソーラーライトが足元を照らしてくれます。

西都原のヒメボタルをいつまでも

一度失われたものを元に戻すのは簡単ではありません。一人ひとりが理解を深め、西都原にヒメボタルが舞う美しい光景を残していきましょう。

場所 御陵墓【男狭穂塚(おさほづか)・女狭穂塚(めさほづか)】
※駐車場は西都原ガイダンスセンターこのはな館の駐車場を利用し、できるだけ暗くなる前にお越しください。(Googleマップ
お問い合わせ 西都原ひめ蛍を守る会:090-9793-8571(吉野)
期間 蛍の発生状況により日程の変更があるため、西都ゆるなびのイベントページもしくは「西都原ひめ蛍守る会Instagram」にてご確認ください
時間 19時~21時 

この記事を書いた人

ゆるなび編集部

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