REPORT特集

宗光寺で味わう、“心を整える一杯”。

2025.11.06


西都市街地にほど近い住宅街に、コーヒーの香りが漂うお寺がある。宗光寺の副住職・押川悠誠さんは、写経や坐禅で訪れた人に自ら焙煎したコーヒーをふるまう。「雑念は、雑味になる」――そんな言葉どおり、 落ち着いて丁寧に淹れられたその一杯には、仏教の教えと同じ“静けさ”が宿る。

11月9日(日)の“さいとマチナカマルシェ”では、押川さんが選んだ本が並ぶ本棚も登場。お寺での静かな時間を想像しながら、本を手に取ってみては。気になった一冊をきっかけに、宗光寺を訪れてみるのもいいかもしれない。

副住職とコーヒー


学生時代、映画制作に没頭していたという押川さん。その頃、眠気覚ましによく飲んでいたのがコーヒーだった。「当初は“苦ければなんでもいい”と思っていました」と笑う。特別なこだわりがあったわけではないけれど、忙しい日々の中でいつもそばにあった飲み物だった。

地元に戻り住職となったあと、2019年のはじめに「何か新しいことを始めたい」と考えた。もともと “お寺をもっと身近に感じてもらいたい” という思いから、坐禅会や写経会を企画していた押川さん。「坐禅のあとにハーブティかコーヒーを出したらどうだろう」と思い立ったのが、コーヒーを提供するきっかけだった。「ハーブは好みが分かれそうですし、コーヒーの方が皆さんに親しみがあると思って」と、自然な流れでコーヒーを選んだという。学生時代に慣れ親しんだコーヒーが、気がつけば今の活動へと繋がっていった。

まずは市販の豆で淹れ始めたが、やがてコロナ禍で時間ができ、YouTubeでコーヒー動画を探すうちに、その魅力に引き込まれていく。鍋焙煎を紹介するチャンネルを見つけ、「100均の片手鍋とカセットコンロがあれば自宅で焙煎できると知って。これなら自分にもできそうだ!と思ってやってみたんです」それが、押川さんの “心を整える一杯” の原点となった。

「雑念は雑味」

「コーヒーと仏教って、どこか似ているところがあるんですか?」少し無茶とも感じられる質問にも、 押川さんはすぐに穏やかな笑顔でこう答えてくれた。

「“雑念は、雑味”」
「 これはパッと浮かんだ言葉じゃなくて、日頃から気をつけていることなんですよ(笑)」

コーヒーは、入れ方ひとつで味が変わる。そわそわした気持ちで淹れれば、その落ち着かなさが味にも出る。丁寧に、落ち着いて向き合えば、穏やかで濁りの無い一杯になる。

「そういうところが、仏教の教えと通じるのかもしれませんね」と押川さん。

お湯を注ぐ手元は静かで、無駄がなく、美しい。いただいたコーヒーは雑味が少なく、でも深みがあった。一杯の中に、”今この瞬間を生きる”という仏教の教えが確かに宿っていた。

非売品のオリジナルドリップバッグ

最近は好きが高じてドリップバッグも自主製作しているそう。コーヒーを手に持ったお地蔵さんのキャラクター「まんぷくちゃん」がプリントされたオリジナルのドリップバッグは坐禅会や写経会に訪れた人に配っている。

パッケージのイラストは東京にいる先輩へ頼んでいるが、それ以外はすべて自作。「今はこうした資材も簡単に手に入るので、ネット通販で資材を買って、豆を挽いて、パックに詰めて…。パックの裏の製品表示シールも見よう見まねで制作したんです。形になると楽しいですよね」

もらった人が喜んでくれることが何よりの励み。“非売品”のこのドリップバッグは、押川さん自身が楽しみながら、お寺を訪れる人との繋がりを大切に育ててきた証でもある。コーヒーを手に微笑む「まんぷくちゃん」は、その穏やかで優しい人柄を映した存在のようだ。

本と”心を整える時間”

11月9日の“さいとマチナカマルシェ”では押川さんの選書した本が並ぶ本棚も登場する。今回のマルシェのテーマは「本、コーヒーと 秋の過ごし方」。


秋の夜長に寄り添う香り豊かなコーヒーや、心を整える本が並ぶ。なかでも注目は、西都のまちの職人や人気店の店主など、“気になるあの人”の本棚を覗いて町を知る「あの人の本棚」というブックエクスペリエンス企画。押川さんも「西都のキーパーソンの本棚を垣間見る」この企画に快く参加してくれた。

「やはり日々修行の身なので、仏教書がメインにはなるのですが、小説や新書も読みますよ」東京にいる友人たちと月に一度オンラインで読書会を開き、お互いに読んだ本を持ち寄って感想を語り合うのが最近の楽しみだそう。「読む時期や気分によって、同じ本でも受け取り方が変わってくる。経験を重ねるほど、理解の仕方や自分の価値観がどんどんアップデートされていくのがおもしろいですね」

印象に残っている一冊を尋ねると、「正法眼蔵随聞記」を挙げてくれた。

「仏教書ではありますが、語りかけるような、訴えかけてくるような文体でとても分かりやすい。 難解な教えも、日常の中で少しずつ腑に落ちていく感じが好きなんです」と押川さん。

読書は、押川さんにとって“心を整える時間”のひとつ。11月9日のマルシェでは、そんな押川さんの感性が詰まった本が並ぶ。どんな本が並ぶのか――マルシェでその本棚をのぞくのが楽しみだ。

お寺をひらくということ

宗光寺では、定期的に“坐禅とヨガ”や写経会などのイベントが開かれている。

誰でも気軽に参加でき、終わったあとには押川さんが自ら焙煎したコーヒーがふるまわれる。静かな本堂に漂う香り、そして人と人がゆるやかにつながる時間――それは“お寺”というよりも、“心を整える場所”そのものだ。

「お寺をもっと身近に感じてほしい」という思いから始まった取り組みは、コーヒーや本、そしてマルシェへと少しずつ広がっている。

忙しい日常の中で、心を立ち止まらせてくれる場所。香りと静けさが交わる宗光寺で、自分だけの“整う時間”を見つけてみてはいかがだろう。



▼萬福山 宗光寺(曹洞宗)
住所:宮崎県西都市右松4-73(駐車場有り)
​TEL:0983-42-2220
Instagram:@soukouzi



▼さいとマチナカマルシェ(11/9(日)開催)
住所:西都市生きがい交流広場周辺(西都市妻町1-73)
TEL:0983-32-6242
Instagram:@saito.marche



 

この記事を書いた人

ゆるなび編集部

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